遺体搬送費用を別途請求された|距離・回数で増える仕組みと確認手順

搬送費は「1回いくら」ではありません。距離・時間帯・回数で動きます。まず何回運んだかを数えてください

請求書に「搬送費」がもう一度載っている。見積書にはなかった、あるいは金額が違う。

まず落ち着いてください。搬送は1回とは限りません。病院から安置所へ、安置所から式場へ、式場から火葬場へ。運ぶたびに費用がかかります。

増えること自体はよくあります。確かめるのは、何回・何キロ・何時に運んだかの3つです。ここが合っていれば、金額の根拠は追えます。

搬送は何回あったか — 費用が積み上がる場所
搬送は何回あったか — 費用が積み上がる場所(作図: 弁護士による葬儀ガード)

搬送は1回で終わりません

多くの人が「病院から運んでもらった1回分」を想定しています。実際は違います。

葬儀の形によりますが、次のように複数回になるのが通常です。

区間目的起きやすさ
病院・自宅 → 安置所亡くなった場所からの搬送ほぼ必ず
安置所 → 式場通夜の前の移動式場が別なら発生
式場 → 火葬場出棺ほぼ必ず
火葬場 → 式場収骨後に戻る場合形式による

寝台車と霊柩車は、名前が違うだけで同じ運送です。棺に納める前が寝台車、納めた後が霊柩車と呼ばれます。

つまり、請求書に「寝台車」と「霊柩車」の両方が載っていても、二重請求とは限りません。区間が違います。

まず、区間ごとに何回運んだかを数えてください。ここが出発点です。

運賃はどう決まっているか

霊柩車による搬送は、許可を受けた運送事業として行われます。料金は自由に決めてよいものではありません。

根拠となる条文 — 運賃は届け出て、掲示されています

霊柩車による遺体の運送は、一般貨物自動車運送事業の一種として国土交通大臣の許可を受けて行われます(貨物自動車運送事業法3条)。

事業者は運賃及び料金を定めたときや変更したときに国土交通大臣へ届け出ることとされ(同法9条)、届け出た運賃・料金は営業所で公衆に見やすいように掲示することとされています(同法10条)。

そのため、「搬送費の運賃表を見せてください」と求めることができます。距離制の基本額、割増、待機料などが書かれています。

運賃表があるということは、金額に根拠があるということです。言い値ではありません。

見積書の搬送費が「一式」だけで書かれている場合は、次のように聞いてください。

  • 何キロまでが基本額か
  • 超えた分は何キロごとにいくらか
  • 深夜・早朝の割増は何時から何時か
  • 待機した時間の料金はあるか

この4つが分かれば、請求額を自分で計算できます。

距離で増える部分

搬送費で一番動くのが距離です。基本額に含まれる距離を超えると、加算されます。

例として、基本額に10kmまでが含まれ、超過分が1kmあたり数百円という形が多く見られます。金額は事業者ごとに違います。

確認すること見る場所
実際の距離病院名と安置所の住所から地図で測る
基本額に含まれる距離運賃表・見積書の但し書き
超過分の単価運賃表

自分で地図を見て距離を測ってください。請求書の距離と大きく違う場合は、その理由を聞けます。

遠方から搬送した場合は、金額が数万円単位で変わります。病院が県外だった場合などです。

高速道路を使った場合、実費が加算されることがあります。領収書を求めてかまいません。

時間帯で増える部分

深夜や早朝の搬送は、割増になるのが通常です。人が亡くなる時間は選べないので、これは避けにくい費用です。

割増の時間帯と率は、届け出た運賃表に書かれています。よくあるのは深夜早朝の時間帯に一定率を加える形です。

昼間の搬送に深夜割増が付いていれば、それは指摘できます。逆に、深夜の搬送に割増が付くのは自然です。

見積書になかった搬送が載っている場合

ここが本題です。見積書になかった区間の搬送が請求されている場合、次の順で確かめます。

実際に運んだのであれば、費用が発生していること自体は自然です。問題は、事前に説明があったかどうかです。

火葬場の予約が取れず、安置が延びて別の施設へ移した。このような事情で搬送が増えることは珍しくありません。

その場合でも、移す前に「移動が必要で、費用がかかります」と伝えるのが本来です。伝えられていないなら、その点を確かめてください。

図で整理: 見積書と請求書の突き合わせ方
図で整理: 見積書と請求書の突き合わせ方(作図: 弁護士による葬儀ガード)

説明がないまま増えていたとき

事前の説明がなかった場合、支払わなければならないのかが問題になります。

結論から言うと、実際に運ばれている以上、費用がまったく発生しないとは言いにくいです。ただし、金額の妥当性は別に議論できます。

根拠となる条文 — 説明されていなかった場合の考え方

契約に必要な事情について、消費者の利益になることだけを告げて不利益となる事実を故意または重大な過失によって告げなかった場合、消費者はその意思表示を取り消すことができます(消費者契約法4条2項)。

また、法令の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比べて消費者の権利を制限し、または義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効となります(同法10条)。

契約の内容が定型約款によって定まる場合でも、相手方の利益を一方的に害し、信義則に反して相手方の利益を害すると認められる条項については、合意をしなかったものとみなされます(民法548条の2第2項)。

現実的な進め方は、争いのある行だけを分けることです。全額の支払いを止める必要はありません。

支払える部分は先に払い、搬送費の増加分だけを保留する。この形であれば、話し合いを続けやすくなります。

保留する場合は、その旨を書面で伝えてください。「支払いを拒んでいる」のではなく「説明を待っている」と示すためです。

誰に請求されるのか

搬送を頼んだ覚えがないのに請求が来ることがあります。契約者が誰かで扱いが変わります。

根拠となる条文 — 葬儀費用を誰が負担するか

葬儀費用を誰が負担するかについて、法律に明文の規定はありません。裁判例では、葬儀を主宰した者(喪主)が負担するとの考え方が示されています(東京地方裁判所平成19年7月27日判決)。

一方、相続人が分担すべきとした裁判例もあり(名古屋高等裁判所平成24年3月29日判決)、事案によって判断が分かれます。

なお、葬式の費用のうち相当な額については、債務者の総財産に対する一般の先取特権が認められています(民法306条3号、309条1項)。

契約書に署名したのが誰かを確かめてください。署名した人が支払いを求められるのが基本です。

病院で「とりあえず運びます」と言われ、書面がないまま搬送されたケースもあります。この場合は、後から契約書を出してもらってください。

金額の目安を持っておく

相場観があると、判断しやすくなります。

株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、葬儀の総額平均は96.73万円、うち基本料金の平均は72.02万円でした。搬送費は基本料金に含まれる場合と、別立ての場合があります。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件あり、うち52.6%が料金に関するものでした。搬送費の追加もその一部です。

  • 近距離(10km前後)の搬送は、1回あたり1万〜3万円程度で見積もられることが多い
  • 深夜早朝の割増、待機料、高速代は別に加算されることがある
  • 県をまたぐ搬送では、十数万円になることもある

金額そのものより、内訳が説明できるかを見てください。説明できる会社は、聞けば数字を出します。

待機料と、安置が延びたときの搬送

火葬場の予約が取れず、安置期間が延びることがあります。都市部では珍しくありません。

このとき費用が増える場所は2つです。安置料と、追加の搬送です。

  • 安置施設が満室になり、別の施設へ移した → 搬送1回分が加算される
  • 車を待たせた時間がある → 待機料が加算されることがある
  • 安置日数が延びた → ドライアイスの追加とあわせて増える

移動が必要になった時点で、費用の説明があったかを思い出してください。事後の請求だけで済ませてよい話ではありません。

厚生労働省の衛生行政報告例によると、火葬の件数は増加が続いています。予約が取りにくい地域があることは、行政資料からも読み取れます。

予約待ちが分かった時点で、「日数が延びると、どの費目がいくら増えますか」と聞いてください。先に聞けば、驚かずに済みます。

遠方から運ぶときの考え方

亡くなった場所が遠い場合、費用は大きく変わります。選択肢は主に3つです。

方法特徴費用の傾向
陸送(霊柩車)そのまま運べる。時間はかかる距離に比例して増える
空路(航空機)遠距離では早い。棺の仕様に条件がある運賃+両端の搬送費
現地で火葬し、遺骨を持ち帰る搬送費を抑えられる現地の火葬料が中心

どれが良いかは、家族の希望と日程で決まります。費用だけで決める話ではありません。

ただし、金額の差は数万円から数十万円に及びます。両方の見積もりを出してもらってから決めてください。

その場で決める必要はありません。「もう1つの方法だといくらですか」と聞けば足ります。

納得できないときの窓口

話し合いで解決しないときは、次の窓口を使えます。費用はかかりません。

窓口内容
消費者ホットライン188最寄りの消費生活センターにつながる
地方運輸局の相談窓口運賃・料金の届出に関する相談
弁護士への相談契約内容と金額の妥当性の確認

相談の前に、次をそろえてください。手元にあるだけで話が早くなります。

  1. 見積書・契約書・請求書の3枚
  2. 搬送の区間と時刻のメモ
  3. 担当者とのやり取りの記録(日時と内容)
遺体搬送の請求 — 支払う前に確認する項目
遺体搬送の請求 — 支払う前に確認する項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

搬送費は、回数と距離と時刻で決まります。総額だけを見ても判断できません。

  • 区間ごとに何回運んだかを数える
  • 運賃表を見せてもらい、基本額・超過単価・割増を確かめる
  • 説明のなかった増加分だけを保留し、書面で理由を求める

数字が出てくれば、そこで判断できます。急いで全額を払う必要はありません。