身元保証会社と葬儀の契約|預託金・解約でもめないための確認

預けたお金がどこにあるかが要です。分別管理と、解約したときの返金を先に確かめてください

身寄りがない親のために、身元保証会社と契約した。葬儀まで頼めると言われた。

こうしたサービスは、必要とする人が増えています。同時に、預けたお金をめぐるトラブルも起きています。

確かめるのは3つです。預託金がどこに置かれているか解約したときにいくら戻るか葬儀の内容がどこまで含まれるか

預けたお金はどこにあるのか
預けたお金はどこにあるのか(作図: 弁護士による葬儀ガード)

どんなサービスなのか

身元保証や死後事務を請け負う事業者は、次のような役務をまとめて提供します。

分類内容
身元保証入院や施設入所の際の保証人になる
生活支援買い物の付き添い、手続の同行
死後事務葬儀、納骨、行政手続、家財の整理
財産管理預金の出し入れの代行、任意後見の受任

いずれも、頼れる家族がいない場合に必要になるものです。サービス自体は、社会の必要に応えるものです。

問題は、契約の形が複雑なことと、預けるお金が大きくなりやすいことです。数十万円から数百万円になる例もあります。

契約は、複数の契約を束ねた形になっているのが通常です。どこまでが何の契約かを分けて確かめてください。

書類が何通あるかを数えるだけでも見えてきます。1通で全部をまかなう形は、むしろ少数です。

写しは、すべて受け取ってください。署名した書面が手元にないと、後から確かめようがありません。

預託金の保管方法を確かめる

一番の確認点がここです。将来の葬儀や納骨のために、あらかじめお金を預けることが多いためです。

このお金は、事業者の運転資金と混ざってはいけません。分けて管理されているかを確かめてください。

  • 信託銀行などによる信託契約で管理しているか
  • 事業者名義とは別の口座で分別して管理しているか
  • 残高の報告が定期的にあるか
  • 第三者(弁護士・司法書士など)が関与しているか

過去には、預託金を運転資金に流用したまま事業者が破綻し、返還されなかった例が報告されています。

総務省の行政評価局は、身元保証等の高齢者サポート事業について調査を行い、契約内容や預託金の管理に関する課題を指摘しています。

その後、国は事業者向けのガイドラインを示し、預託金の管理や説明のあり方を整理しています。契約前に、対応状況を聞いてください。

解約したときの返金

委任に基づく契約は、原則としていつでも解除できます。ここは押さえておいてください。

根拠となる条文 — 委任はいつでも解除できます

委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができます(民法651条1項)。相手方に不利な時期に解除した場合などには、損害の賠償が必要になることがあります(同条2項)。

受任者は、委任事務を処理するために受け取った金銭を委任者に引き渡さなければなりません(同法646条1項)。預けた金銭の返還は、この規律に沿って考えられます。

また、委任者の請求があるときは、いつでも事務処理の状況を報告する義務があります(同法645条)。「預けたお金の残高を教えてください」と求めることができます。

問題は、解約時に差し引かれる金額です。契約書に「返金しない」と書かれていることがあります。

根拠となる条文 — 解約料の上限

契約の解除に伴う違約金や損害賠償を定める条項は、同種の契約の解除で事業者に生じる平均的な損害の額を超える部分が無効になります(消費者契約法9条1項1号)。

最高裁判所平成18年11月27日判決(民集60巻9号3437頁)は、平均的な損害とは、解除の事由や時期などで区分した同種の契約について生じる損害額の平均をいうとしました。

また、消費者の権利を制限し、または義務を加重する条項で、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効です(同法10条)。「一切返金しない」という条項は、この点から問題になり得ます。

契約の前に、「途中で解約した場合、いくら戻りますか」と聞いてください。計算式を書面でもらうのが確実です。

図で整理: 契約から解約までの確認点
図で整理: 契約から解約までの確認点(作図: 弁護士による葬儀ガード)

葬儀の内容を品目で書いてもらう

「葬儀一式付き」という説明だけでは、何が含まれるか分かりません。後から差額を求められることがあります。

株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、葬儀の総額平均は96.73万円でした。内訳は基本料金72.02万円、飲食費11.67万円、返礼品費13.03万円です。

含まれるかどうかを確かめる項目は決まっています。

確かめる費目含まれないことがある
火葬料自治体・施設により金額が違う
式場使用料使う施設によって変わる
安置料・ドライアイス日数で増える
搬送費距離と回数で増える
宗教者へのお礼別に必要になることが多い
納骨・埋葬の費用別契約のことがある

「含まれない費目の一覧をください」と頼めば、書面で出してもらえます。断られる理由はありません。

一覧が出たら、その合計を自分で足してみてください。総額の見込みが立ちます。

見込みが預託金を超えるなら、不足分を誰がどう払うのかを決めておく必要があります。

財産管理を任せる場合

預金の出し入れを任せる契約は、特に慎重に見てください。お金の流れが見えにくくなります。

  • 月ごとの収支報告があるか
  • 通帳やカードを誰が保管するか
  • 第三者がチェックする仕組みがあるか
  • 任意後見契約と、どちらが優先されるか

任意後見契約を結んでいる場合、家庭裁判所が選んだ後見監督人が関与します。監督の仕組みがある点が違います。

判断能力が下がってきた場合に、どの契約に切り替わるのかも確かめてください。移行の条件が書かれているはずです。

事業者が破綻した場合

最悪の場合を想定しておくことも必要です。分別管理の有無が、結果を大きく分けます。

信託などで分けて管理されていれば、事業者の財産とは区別されます。返還を受けられる可能性が高まります。

一方、事業者名義の口座で一緒に管理されていれば、一般の債権として扱われることになります。全額は戻りにくくなります。

だから、最初の確認が「預託金はどこにありますか」なのです。この一言で、抱えることになる危険の大きさが変わります。

契約後も、年に一度は残高の報告を求めてください。報告を求めることは、契約上の権利です。

死後事務委任契約との違い

似た名前の契約が並ぶため、混乱しやすい分野です。整理しておきます。

契約効力が生じる時期主な内容
身元保証契約生前入院・入所の際の保証
任意後見契約判断能力が下がった後財産管理・身上保護
死後事務委任契約亡くなった後葬儀・納骨・行政手続
遺言亡くなった後財産の分け方の指定

必要なものだけを選んで結べます。全部をまとめて契約する必要はありません。

たとえば、葬儀と納骨だけを頼みたいなら、死後事務委任契約だけで足りることがあります。費用も抑えられます。

任意後見契約は、公正証書で作ることとされています。公証役場の手数料がかかりますが、監督の仕組みがあります。

どれが必要かは、家族の状況によって変わります。まず地域包括支援センターに相談すると、整理してもらえます。

費用の内訳を分けて見る

料金がまとめて示されると、高いか安いかを判断できません。分けて聞いてください。

  • 入会金・登録料(最初に払う分)
  • 月額または年額の管理料
  • 実際に役務を使ったときの費用
  • 葬儀や納骨のために預ける預託金

このうち、預託金は「預けているお金」であって、支払った費用ではありません。性質が違います。

だから、預託金が返ってくる条件を確かめる必要があります。使われなかった場合にどうなるかも聞いてください。

契約の途中で亡くなった場合、残った預託金は相続財産として扱われるのが基本です。相続人がいれば、その人に返還されます。

相続人がいない場合の扱いも、契約書に書かれているはずです。どこへ行くお金なのかを確かめてください。

契約の前に確かめること

まとめて確かめられるよう、順に並べます。すべて契約前に聞ける内容です。

7つのうち、答えがあいまいなものがあれば、その場で決めないでください。持ち帰って構いません。

家族や親族がいる場合は、内容を共有してください。契約の存在を知らないと、いざというときに使えません。

相談できる窓口

判断に迷うときや、契約後に不安が生じたときの窓口です。費用はかかりません。

窓口内容
消費者ホットライン188最寄りの消費生活センターにつながる
市区町村の高齢者相談窓口地域包括支援センターなど
弁護士・司法書士への相談契約内容の確認、任意後見の検討

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件で、うち52.6%が料金に関するものでした。

高齢者向けのサポート事業に関する相談も、継続して寄せられています。契約前の相談も受け付けています。

契約後にできること

すでに契約している場合でも、確かめられることはあります。

  1. 契約書と料金表の写しを手元に集める
  2. 預託金の残高と管理方法の報告を求める
  3. 解約した場合の返金額を確かめる
  4. 家族に契約の存在を伝える
  5. 内容に不安があれば、消費生活センターに相談する

報告を求めることに、遠慮は要りません。契約上の権利として認められています。

回答がない、あるいは説明があいまいな場合は、その事実を記録してください。相談する際の材料になります。

日付・担当者名・聞いた内容の3つで足ります。メールで問い合わせると、記録がそのまま残ります。

電話で話した場合も、その内容をメールで送って確認する方法があります。相手の返信が記録になります。

身元保証の契約 — 署名の前に確認する項目
身元保証の契約 — 署名の前に確認する項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

確かめる順番は決まっています。金額より先に、お金の置き場所です。

  • 預託金がどこで管理されているかを確かめる
  • 解約したときの返金額を、計算式で受け取る
  • 葬儀に含まれる品目と、含まれない費目を一覧でもらう

答えがあいまいなら、その場で契約しないでください。持ち帰って比べる時間を取ってかまいません。