病院から葬儀社へ個人情報が渡っていたとき|確認できることと手順

亡くなった直後に知らない葬儀社から電話が来た。まず「どこで連絡先を知ったか」を聞いてください

親が亡くなった直後、病院を出る前に知らない葬儀社から電話が来た。

不快に感じるのは当然です。まず確かめてほしいのは、たった一言です。「どこで私の連絡先を知りましたか」

答え方で、状況が分かります。そのうえで、必要なら病院に確認できます。断るのも自由です。順に見ていきます。

連絡先はどこから伝わったのか
連絡先はどこから伝わったのか(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まず聞くこと

電話を受けたその場で聞けます。落ち着いた口調で構いません。

  • 「どちらから私の電話番号を知りましたか」
  • 「病院から伺ったということでしょうか」
  • 「担当された方のお名前を教えてください」

この3つで足ります。答えをメモに残してください。日時と、相手の会社名・担当者名も一緒に書きます。

答えをはぐらかされた場合は、その事実自体が記録になります。「答えられないと言われた」と書いておいてください。

営業の連絡そのものが違法とは限りません。確かめたいのは、あなたの連絡先がどう渡ったかです。

亡くなった人の情報と、遺族の情報は違います

ここが分かりにくい部分です。分けて理解すると、話が整理されます。

根拠となる条文 — 保護の対象になる情報

個人情報保護法が対象とする個人情報は、生存する個人に関する情報です(個人情報保護法2条1項)。そのため、亡くなった方ご本人の情報は、この法律の直接の対象にはなりません。

一方、遺族であるあなたの氏名・住所・電話番号は、生存する個人の情報として保護の対象になります。

なお、個人情報保護委員会と厚生労働省が定める「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」では、亡くなった方の情報についても、生存する個人の情報と同様に適切に取り扱うことが求められています。

つまり、故人の情報そのものより、遺族の連絡先が渡ったことが問題になります。

病院は、家族の連絡先を診療のために保有しています。その目的の外で使うには、原則として本人の同意が要ります。

入院時に書いた同意書に、関連する記載があることもあります。写しが手元にあれば、読み返してください。

写しがない場合は、病院に「同意書の写しをください」と求められます。自分が署名した書類です。

第三者に渡すときのルール

事業者が個人データを第三者へ渡すには、原則として本人の同意が必要です。

根拠となる条文 — 第三者提供の制限

個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならないとされています(個人情報保護法27条1項)。

また、あらかじめ特定した利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱うことも、原則として認められません(同法18条1項)。

例外はありますが、葬儀社への連絡先の提供が、これらの例外にあたるとは考えにくいところです。院内の掲示や同意書で説明されていたかどうかが、確認の出発点になります。

裁判所も、連絡先のような情報について保護の必要を認めてきました。

参考になる判例 — 連絡先はプライバシーに係る情報

最高裁判所平成15年9月12日判決(民集57巻8号973頁)は、大学が講演会の参加者名簿を本人に無断で警察へ提出した事案について、学籍番号・氏名・住所・電話番号は、プライバシーに係る情報として法的保護の対象になるとしました。

秘匿性の高い情報でなくても、本人が「みだりに開示されたくない」と考えることは自然であり、その期待は保護されるという考え方です。

葬儀社への連絡先の提供についても、同じ視点から評価されることになります。

病院に確認する

気になる場合は、病院に確かめられます。相手は、診療した医療機関の相談窓口です。

病院によっては、遺族が希望した場合にのみ葬儀社を案内する運用をとっています。その場合は、希望した記録があるはずです。

一方、院内に常駐している業者が、亡くなった時点で自動的に動く運用になっていることもあります。ここは確かめる価値があります。

言い方は、責める形にしなくて構いません。「事実を知りたい」という姿勢で足ります。

図で整理: 確認から対応までの流れ
図で整理: 確認から対応までの流れ(作図: 弁護士による葬儀ガード)

開示や利用停止を求める

自分の情報について、どう扱われているかを確かめる権利があります。

根拠となる条文 — 開示・利用停止の請求

本人は、個人情報取扱事業者に対し、その保有個人データの開示を請求することができます(個人情報保護法33条1項)。

利用目的の範囲を超えて取り扱われている場合や、不正な手段で取得された場合などには、利用の停止や消去を請求することができます(同法35条1項)。

また、本人の同意なく第三者へ提供された場合には、提供の停止を求めることができます(同条3項)。事業者は、苦情の適切かつ迅速な処理に努める義務も負っています(同法40条1項)。

葬儀社に対しては、「私の連絡先を消去してください」と求めることができます。書面で伝えると記録が残ります。

病院に対しては、今後同様の提供をしないよう求めることができます。これも書面が確実です。

対応に納得できない場合は、個人情報保護委員会に相談できます。個人情報保護法についての相談ダイヤルが設けられています。

断るときの言い方

そもそも、頼む義務はありません。断ることに理由の説明も要りません。

  • 「他で決めていますので、結構です」
  • 「今は決められません。こちらから連絡します」
  • 「今後のご連絡は不要です」

3つ目まで言えば、通常は連絡が止まります。止まらない場合は、その回数と日時を記録してください。

病院で「この業者にお願いしてください」と言われても、従う義務はありません。葬儀社は自分で選べます。

急いでいるときは、搬送だけを頼み、施行の契約は後で決める方法もあります。この2つは別の契約です。

搬送の依頼をした時点で、金額を確かめておいてください。距離と時間帯で変わります。

「安置は1日いくらですか」も一緒に聞いておくと、判断する時間を確保できます。

病院で紹介された場合の考え方

病院から紹介された葬儀社が悪い、という話ではありません。実際に丁寧な会社もあります。

問題は、比べる機会がないまま契約に進みやすいことです。金額の確認が後回しになります。

株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、葬儀の総額平均は96.73万円でした。金額としては大きな買い物です。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件で、うち52.6%が料金に関するものでした。

だから、紹介を受けた場合でも、見積書を必ず受け取ってください。品目・数量・単価が入った形で出してもらいます。

紹介料が動いている場合

病院や施設が紹介の対価を受け取っている例が問題になることがあります。

金銭が動くと、紹介は営業の一部になります。患者や家族の利益とは別の力が働きます。

確かめること聞き方
紹介の仕組み「どういう経緯でご連絡いただきましたか」
契約の自由「他社に頼んでも差し支えありませんか」
費用の内訳「紹介に関わる費用は含まれていますか」

これらを聞いたからといって、失礼にはあたりません。支払う側として当然の確認です。

答えにくそうな反応が返ってきた場合は、その場で決めないでください。持ち帰ると伝えれば足ります。

施設や警察から連絡が行く場合

病院以外の場面でも、同じことが起きます。それぞれ事情が違うため、分けて考えてください。

介護施設で亡くなった場合、施設が提携する葬儀社に連絡することがあります。契約時の書類に記載があることもあります。

自宅で亡くなり、警察が関わった場合は、遺体の搬送を担う業者が決まっていることがあります。搬送と葬儀の契約は別です。

場面起きやすいこと確かめること
病院院内の業者から連絡が来る誰が連絡先を伝えたか
介護施設提携先が案内される入所時の書類に記載があるか
警察が関わる場合搬送業者が指定される搬送費と、その後の契約は別か

搬送を頼んだ会社に、そのまま葬儀を頼まなければならない決まりはありません。ここは誤解されやすい点です。

「搬送だけお願いします。葬儀は改めて決めます」と伝えて差し支えありません。断られたら、別の会社に頼めます。

相談できる窓口

対応に納得できない場合の窓口を整理します。いずれも費用はかかりません。

窓口扱う内容
病院の患者相談窓口院内の運用と、事実関係の確認
個人情報保護委員会の相談ダイヤル個人情報の取扱いに関する相談
消費者ホットライン188契約・勧誘に関する相談
都道府県・市区町村の医療安全相談窓口医療機関の対応に関する相談

どこに相談する場合も、記録があると話が早く進みます。日付と相手の名前を書いたメモで足ります。

まず病院の窓口に確かめ、それでも解決しない場合に外部へ、という順が現実的です。

強く抗議することが目的ではありません。事実を確かめ、今後の扱いを改めてもらうことが目的です。

記録の残し方

後から相談するときに効くのは記録です。難しい形式は要りません。

  1. 電話を受けた日時
  2. 会社名・担当者名・電話番号
  3. 言われた内容(特に「どこで知ったか」への答え)
  4. 病院に確認した日時と、回答の内容
  5. 断った日時と、その後の連絡の有無

スマートフォンのメモで足ります。着信履歴のスクリーンショットも残しておいてください。

これがあれば、消費生活センターや個人情報保護委員会に相談するとき、そのまま説明できます。

葬儀の準備で忙しい時期です。完璧な記録である必要はありません。断片でも残っていれば役に立ちます。

落ち着いてから書き足しても構いません。日付だけは、そのつど残しておいてください。

連絡先の扱い — 確かめる項目
連絡先の扱い — 確かめる項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

不快な連絡を受けたときは、順番に確かめれば整理できます。

  • 「どこで連絡先を知ったか」を聞き、記録する
  • 病院に、伝えたかどうかと根拠を確かめる
  • 断るのは自由。理由の説明は要らない

そのうえで、葬儀社は自分で選んでください。急ぐのは搬送だけです。