葬儀ローンの審査と注意点|契約する前に確かめる条件

借りる前に、他の方法がないかを見てください。金利と総返済額は必ず計算します

葬儀費用の支払いに、手元の資金が足りない。葬儀社からローンをすすめられた。

その場で決める前に、確かめてほしいことがあります。ローンは最後の選択肢です。先に使える方法が、いくつかあります。

そのうえで借りるなら、金利と総返済額を必ず計算してください。数字が出れば、判断できます。

借りる前に確かめる順番
借りる前に確かめる順番(作図: 弁護士による葬儀ガード)

借りる前に確かめること

すぐに借りる必要があるとは限りません。順番に見ていきます。

方法内容入金までの目安
支払期限の相談葬儀社に事情を伝えるすぐ
生命保険金故人の保険を請求する数日〜2週間
預貯金の仮払い故人の口座から一定額を引き出す書類がそろえば数日
葬祭費・埋葬料市区町村や保険者へ申請1〜2か月
香典参列者からの香典当日

支払期限は、法律ではなく契約で決まっています。だから、相談の余地があります。

「保険金が◯日に入る見込みです」と具体的に伝えれば、待ってもらえることが多くあります。黙って遅れるのとは、扱いがまったく違います。

生命保険は、比較的早く入金されます。故人がどの保険に入っていたかは、通帳の引き落とし履歴から追えます。

保険証券が見つからない場合は、生命保険協会の照会制度が使えます。契約の有無を調べてもらえます。

香典も、当日に手元に入る資金です。葬儀費用の一部を賄えることがあります。

これらを足して、不足する分だけを借りると考えてください。借入額が小さくなれば、利息も減ります。

預貯金の仮払い制度

故人の口座は、金融機関が死亡を把握すると凍結されます。ただし、一定額までは引き出せる仕組みがあります。

根拠となる条文 — 預貯金の仮払い

各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち、相続開始の時の債権額の3分の1に法定相続分を乗じた額について、単独で権利を行使することができるとされています(民法909条の2)。

同一の金融機関に対して行使できる額の上限は、法務省令で150万円と定められています。

最高裁は平成28年12月19日大法廷決定において、共同相続された普通預金債権、通常貯金債権および定期貯金債権は、相続開始と同時に当然に分割されることはなく、遺産分割の対象となるとしました。仮払い制度は、この判例を前提に設けられたものです。

手続きには、故人の出生から死亡までの戸籍と、相続人であることを示す書類が必要です。書類をそろえるのに時間がかかります。

相続放棄を検討している場合は、引き出す前に相談してください。使い方によっては、放棄ができなくなることがあります。

もっとも、相当な範囲の葬儀費用に充てた場合について、相続財産の処分にあたらないとした裁判例もあります。判断は事案によって分かれます。

使い道が分かる記録を必ず残してください。領収書と、いくらを何に充てたかのメモです。

判断に迷うときは、引き出す前に弁護士に確かめてください。後から取り返しがつかないことがあります。

葬儀ローンとはどういう仕組みか

葬儀ローンは、信販会社が葬儀費用を立て替え、利用者が分割で返済する仕組みです。

葬儀社が信販会社と提携している場合、その場で申し込めます。手続きが早いのが利点です。

項目内容
貸主信販会社(葬儀社ではない)
審査あり。数十分〜数日
金利年3%〜15%程度と幅がある
返済期間6か月〜10年程度
保証人不要なことが多い

金利の幅が大きい点に注意してください。同じ「葬儀ローン」でも、条件は商品によって違います。

葬儀社は貸主ではありません。だから、金利や条件について詳しい説明ができないこともあります。契約の相手は信販会社です。

契約書の名義と、問い合わせ先を確かめてください。困ったときに連絡する相手が変わります。

書面は必ず控えをもらってください。金利、返済回数、総返済額が記載されています。

その場でもらえない場合は、全ページを撮影しておいてください。手間は1分ほどです。

審査で見られること

審査は、返済できるかどうかを見るものです。主に次の点が確かめられます。

  • 安定した収入があるか
  • 他の借入の状況(総額と件数)
  • 過去の返済の履歴
  • 年齢と勤続年数

年金収入だけの場合、審査が通らないことがあります。年齢の上限が設けられている商品もあります。

審査に通らなかった場合でも、他の方法があります。銀行のフリーローン、家族名義での申し込み、支払期限の相談などです。

審査の申し込み自体に費用はかかりません。ただし、申し込みの記録は信用情報に残ります。短期間に複数申し込むのは避けてください。

審査の結果は、その場で出ることも、数日かかることもあります。急いでいる場合は、所要時間を先に聞いてください。

通らなかった理由は、通常は教えてもらえません。心当たりがある場合は、他の方法に切り替えるほうが早道です。

家族が申し込む方法もあります。ただし、返済する人が誰かを、家族の間で明確にしておいてください。

総返済額を計算する

いちばん大切な作業です。月々の返済額だけで判断しないでください。

計算は単純です。「月々の返済額 × 返済回数」が総返済額です。そこから借入額を引けば、利息の総額が出ます。

借入額金利期間総返済額の目安
50万円年5%3年約54万円
50万円年12%3年約60万円
100万円年5%5年約113万円
100万円年12%5年約133万円

金利が違うだけで、返す総額が大きく変わります。だから、金利は必ず確かめてください。

契約書には、金利、返済回数、総返済額が書かれています。署名の前に、その3つを見てください。

月々の返済額が小さく見えても、期間が長ければ総額は増えます。期間の長さは、金額に直結します。

返済期間は、無理のない範囲でできるだけ短くするのが基本です。ただし、生活が圧迫されない額に抑えてください。

月々の額と期間の組み合わせを、2〜3通り出してもらうと比べやすくなります。

図で整理: 金利と期間で総返済額が変わる
図で整理: 金利と期間で総返済額が変わる(作図: 弁護士による葬儀ガード)

他の借入方法との比較

葬儀ローン以外にも、選択肢があります。

方法金利の目安手続きの速さ
葬儀ローン(信販会社)年3%〜15%早い
銀行のフリーローン年2%〜14%やや時間がかかる
クレジットカードの分割年12%〜15%早い
カードローン年3%〜18%早い
社会福祉協議会の貸付低利または無利子条件・審査あり

急いでいない場合は、銀行のローンを検討する価値があります。金利が低いことがあるためです。

クレジットカードで一括決済し、後から分割やリボに変える方法もあります。ただし、リボ払いは総返済額が読みにくくなります。

社会福祉協議会の生活福祉資金貸付は、条件を満たせば低利または無利子で借りられます。市区町村の社会福祉協議会に相談してください。

条件や審査があるため、誰でも使えるわけではありません。ただし、相談自体は無料です。

支給までに時間がかかることもあります。急ぐ場合は、支払期限の相談と並行して進めてください。

制度の内容は自治体によって異なります。まず窓口に電話して確かめてください。

契約の前に確かめる5つのこと

その場で聞ける内容です。

3つ目は見落とされがちです。保険金や給付金が入ったときに、まとめて返せると利息が減ります。

繰上返済に手数料がかかる商品もあります。事前に確かめておいてください。

葬祭費や埋葬料は、申請から1〜2か月で入金されます。その時期に繰上返済できれば、利息が減ります。

入金の見込みが立っているなら、返済期間を短く設定する方法もあります。ただし、月々の負担は増えます。

どちらを選ぶかは、収入と支出の見通しで決めてください。無理のない設定が優先です。

消費者としての権利

ローンの契約も、消費者契約です。説明を求めることは正当な行為です。

根拠となる条文 — 契約内容の明確化と不当条項

事業者は、消費者契約の内容が明確かつ平易なものになるよう配慮するとともに、契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために必要な情報を提供するよう努めなければならないとされています(消費者契約法3条1項)。

消費者の権利を制限し、または義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効とされています(同法10条)。

また、消費者契約の解除に伴う損害賠償や違約金の条項は、平均的な損害の額を超える部分が無効になります(同法9条1項1号)。金銭債務の支払いが遅れた場合の遅延損害金についても、年14.6パーセントを超える部分は無効とされています(同項2号)。

その場で決めるよう強く求められた場合は、持ち帰ってかまいません。「一度持ち帰って家族と相談します」と伝えれば足ります。

借りた後にできること

返済が苦しくなった場合は、放置しないでください。早めに信販会社に連絡します。

  • 返済期間の延長を相談する
  • 一時的に返済額を減らせるか聞く
  • 公的給付が入ったら、繰上返済する

連絡を取っていれば、対応してもらえることがあります。連絡が途絶えると、督促や法的手続きに進みます。

複数の借入で返済が難しくなっている場合は、法テラスや弁護士に相談してください。整理する方法があります。

法テラスでは、収入などの条件を満たせば、無料の法律相談を受けられます。費用の立替制度もあります。

早い段階で相談するほど、選べる方法が多く残ります。督促が始まってからでは、対応が限られます。

一人で抱え込まないでください。相談することは、恥ずかしいことではありません。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件あり、うち52.6%が料金に関するものでした。支払いに関する相談も、その中に含まれます。

そもそも費用を下げるという選択

借りる前に、費用そのものを見直す方法もあります。

株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、葬儀費用の総額の平均は96.73万円です。一方、直葬・火葬式の平均は49.56万円でした。

形式を変えれば、金額は大きく変わります。契約の前であれば、まだ選べます。

支払いが難しいと分かっている場合は、葬祭扶助や市民葬・区民葬の制度も確かめてください。葬祭扶助は、葬儀を行う前に申請する必要があります。

葬儀ローン — 契約前に確認する項目
葬儀ローン — 契約前に確認する項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

ローンは、他の方法を確かめてから検討してください。

  • 支払期限の相談、保険金、預貯金の仮払いを先に確かめる
  • 借りるなら、金利と総返済額を数字で確認する
  • 繰上返済ができるかを、契約前に聞いておく

その場で決める必要はありません。持ち帰ってかまいません。