弁護士が葬儀社を紹介しない理由|中立を保つ仕組み

「どこか良い葬儀社を紹介してください」に答えられない理由があります

「良い葬儀社を紹介してほしい」。相談の場で、いちばん多く出る依頼かもしれません。

しかし、答えは決まっています。紹介はしません。冷たいからではありません。紹介をした瞬間に、中立でいられなくなるからです。

代わりにできることはあります。候補の探し方、見積書の見方、聞くべき質問。これらは全部お伝えできます。

「紹介」と「情報提供」はどこが違うのか
「紹介」と「情報提供」はどこが違うのか(作図: 弁護士による葬儀ガード)

紹介と情報提供は違います

まず、言葉を整理します。この2つは、まったく別のものです。

紹介とは、特定の事業者を名指しして「ここに頼むとよい」と勧めることです。判断を代わりに行う行為です。

情報提供とは、選ぶための材料を渡すことです。判断そのものは依頼者が行います。

紹介情報提供
特定の会社名を挙げて勧める探し方と比べ方を伝える
判断の主体が弁護士に移る判断の主体は依頼者のまま
紹介元との関係が生じる関係は生じない
中立性が保てなくなる中立性が保たれる

セカンドオピニオンの仕事は、右の列です。左の列に足を踏み入れると、仕事の意味が変わります。

だから、「どこがよいですか」には答えません。代わりに「こう確かめてください」と答えます。

一見、不親切に見えるかもしれません。しかし、これが依頼者の利益を守る形です。

急いでいる場面で「自分で選んでください」と言われるのは、負担に感じるかもしれません。

そこで、選ぶ手間を減らす工夫をします。確かめる項目を絞り、聞く言葉を用意します。

選択肢を全部調べる必要はありません。2社を同じ条件で比べれば、判断はできます。

弁護士法が禁じていること

法律には、はっきりした定めがあります。中心になるのは弁護士法72条と27条です。

根拠となる条文 — 非弁行為と非弁提携

弁護士または弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で法律事務を取り扱い、またはこれらの周旋をすることを業とすることができません(弁護士法72条)。

弁護士は、72条から74条までの規定に違反する者から事件の周旋を受け、またはこれらの者に自己の名義を利用させてはならないとされています(弁護士法27条)。

弁護士は、依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その他の対価を支払ってはならず、また、依頼者の紹介の対価を受け取ってはならないとされています(弁護士職務基本規程13条)。

最後の規程が、この記事の核心です。紹介の対価を受け取ってはいけない。弁護士の側の義務です。

葬儀社から紹介料を受け取れば、この規程に反します。金額の大小は関係ありません。

だから、葬儀社との間に金銭の関係を作らない。これが出発点になります。

なぜ紹介料が問題なのか

法律で決まっているから、というだけでは腑に落ちないかもしれません。実質的な理由を説明します。

紹介料を受け取ると、収入源が2つになります。依頼者からの費用と、葬儀社からの紹介料です。

このとき、判断が揺れます。依頼者にとって不利な契約でも、紹介先の会社をかばう動機が生まれます。

具体的には、次のような場面です。

  • 紹介先の見積書に疑問がある。指摘すれば紹介料が途切れる
  • 他社のほうが安い。伝えれば紹介先が離れる
  • 紹介先とトラブルになった。代理人として戦えない

3番目が決定的です。紹介した相手と争うことは、事実上できません。

セカンドオピニオンは、疑問を指摘するための仕組みです。指摘できない立場では、名前だけの存在になります。

だから、金銭を受け取らない。これは倫理の話であると同時に、機能の話でもあります。

葬儀の紹介サイトとの違い

葬儀の紹介サイトは、掲載する会社から手数料を受け取る仕組みで運営されているものがあります。

この仕組み自体は違法ではありません。広告として成り立っています。

ただし、手数料は最終的に葬儀の価格に反映されます。無料で紹介が受けられるわけではありません。

  • 掲載料や成約手数料が価格に含まれる
  • 手数料の高い会社が上位に出ることがある
  • 掲載基準が示されていないサイトもある

サイトを使うなと言いたいわけではありません。仕組みを知って使えば、有用な情報源です。

見るべきは、掲載基準と手数料の仕組みが書かれているかどうかです。書いてあるサイトは、姿勢が見えます。

表示のルールもあります

事業者の表示については、別の法律もはたらいています。

根拠となる条文 — 表示の規制

事業者は、商品や役務の品質・内容について、実際のものより著しく優良であると一般消費者に示す表示をしてはならないとされています(景品表示法5条1号)。

価格その他の取引条件について、実際のものより著しく有利であると誤認される表示も禁止されています(同条2号)。

事業者が第三者を装って行う表示など、一般消費者が事業者の表示であることを判別しにくい表示も規制の対象とされています(同条3号に基づく指定)。

つまり、口コミやランキングの体裁をとった広告には、限界があります。

読む側としては、事実と数字が書かれているものだけを参考にするのが安全です。

「業界最安」「必ず安くなる」といった表現は、根拠の確認が必要です。条件が細かく付いていることがあります。

比較の対象が示されていない「他社より○万円安い」も、確かめる価値があります。

数字を見たら、条件を聞いてください。同じ条件でなければ、比べたことになりません。

図で整理: 中立を保つための線引き
図で整理: 中立を保つための線引き(作図: 弁護士による葬儀ガード)

では何ができるのか

紹介はしません。その代わり、次のことはお伝えできます。実務では、こちらのほうが役に立ちます。

このうち2番と3番が、いちばん効きます。金額の差は、たいてい「含まれる範囲」の差だからです。

自分で選んだ会社なら、納得もしやすくなります。他人に選んでもらった会社では、そうはいきません。

選ぶ力を渡すことが、結果として依頼者の利益になります。これが情報提供の考え方です。

候補の探し方

紹介がなくても、候補は自分で見つけられます。手順は難しくありません。

  1. 住んでいる市区町村の公営式場を調べる
  2. その式場を使える葬儀社を、施設の窓口で確かめる
  3. 地域の葬儀社を2社選び、事前見積もりを依頼する
  4. 同じ条件を伝えて、同じ形式の見積書をもらう
  5. 6つの行だけを比べる

公営式場は、使用料が民営より低いことが多くあります。住民であれば割引がある自治体もあります。

火葬場も、公営であれば火葬料が無料または低額の地域があります。まず自治体の窓口で確かめてください。

葬儀社の所在地は、搬送の距離に影響します。近い会社のほうが、費用も対応も有利になりがちです。

互助会に加入している場合は、加入先も候補に入ります。積立金をどう充当できるかを聞いてください。

見積書を比べる6つの行

具体的に、どこを見るかを示します。この6行をそろえれば、会社ごとの違いが見えます。

見るところ
祭壇ランク名と生花の本数
式場何日分か、時間超過はいくらか
安置1日あたりの単価と、含まれる日数
搬送何キロまで含むか、追加は1キロいくらか
飲食・返礼品1人あたりの単価と、想定人数
火葬料含まれるか、別途か

範囲がそろっていない見積書は比べられません。「この条件で出し直してください」と頼めます。

株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、葬儀の総額平均は96.73万円、基本料金の平均は72.02万円でした。

差額の約25万円が、人数で動く費用です。ここを比べると、会社の違いが出やすいところです。

セカンドオピニオンの役割

弁護士に頼めるのは、選ぶことではなく、確かめることです。役割は3つに分かれます。

  • 契約前 — 見積書と契約書の内容を確認する
  • 契約中 — 追加や変更が妥当かを確認する
  • 葬儀後 — 請求書の内容を確認する

どの段階でも、判断するのは依頼者本人です。弁護士は材料を示す側にいます。

「この行は説明を求めたほうがよい」「この解約料は根拠を聞ける」。こうした形でお伝えします。

決めるのはご家族です。この形を保つために、葬儀社から金銭を受け取らない体制を取っています。

この体制は、依頼者にとっての保証でもあります。誰の利益で動いているかが、はっきりします。

疑問があれば、遠慮なく聞いてください。「どこから収入を得ているのか」は、正当な質問です。

答えられない相手には、任せないほうが安全です。これは弁護士に限った話ではありません。

病院で紹介された会社はどうか

病院で葬儀社を案内されることがあります。断ってよいですし、そのまま頼んでも構いません。

案内があること自体は、違法ではありません。搬送を急ぐ必要があるためです。

大事なのは、案内されたからといって価格が決まったわけではない点です。見積書は求められます。

急ぐのは搬送だけです。搬送を頼んだ会社に、葬儀まで頼む義務はありません。

「搬送だけお願いします。葬儀は改めて決めます」と伝えて差し支えありません。

この一言で、比べる時間が作れます。数時間でも、判断の質は変わります。

搬送の料金は、その場で確かめてください。距離と時間帯で変わります。

相談先の選び方

弁護士に相談するときも、費用の仕組みを確かめてください。ここは他の業種と同じです。

確かめることなぜ
誰から報酬を受け取っているか中立かどうかの前提
相談料の有無と金額総額の見通し
対応する範囲確認だけか、交渉まで含むか
記録の残し方後から確かめられるか

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件で、うち52.6%が料金に関するものでした。

無料の窓口も使えます。消費者ホットライン188は、地域の消費生活センターにつながります。

法テラスの無料法律相談は、収入と資産の要件を満たす場合に利用できます。窓口は0570-078374です。

各地の弁護士会でも、相談の窓口が開かれています。分野を指定して予約できることがあります。

自治体の無料法律相談も、多くの市区町村で行われています。予約制のことが多いところです。

相談の前に、契約書・見積書・請求書を時系列で並べてください。30分でも十分に見込みが立ちます。

相談する前 — 確認する項目
相談する前 — 確認する項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

紹介をしないのは、依頼者の側に立ち続けるためです。

  • 特定の会社を勧めることはしない。判断はご家族が行う
  • 代わりに、探し方・比べ方・確かめ方をお伝えする
  • 葬儀社から金銭を受け取らない体制を保つ

選ぶ力を持てば、迷いは減ります。落ち着いて確認すれば大丈夫です。